夏の切れ端

 フローリングの冷たい床に寝転がれば、ガラス一枚隔てた世界に夏らしい強い日差しが余すことなく降り注いでいる様が見えた。窓に映る、真っ青な空の切れ端。それがどうしようもなく眩しくて、その光が美しければ美しいほどに淋しくなる…

続きを読む →

そうでなくちゃね!

 やっと彼女に会える。そんな夢みたいな現実に、俺の胸はいまにも張り裂けそうだった。ドキドキする心臓はないけれど、断片的なシミュレーションが俺の体中を駆け巡ってはノイズを生む。自由に動かすことのできる体があるということがま…

続きを読む →

追憶を奏でる

 気の乗らない授業をサボった三限目、校舎の外れの人気のない多目的教室で彼を見かけた。サボりの僕が言うのもなんだけど、彼は碌に授業に出たことがない。いつもブレザーを着ないで、シャツ一枚でふらふらしている。だけど、勉強ができ…

続きを読む →

彼女が猫を好きな理由

「恥ずかしいんだけど」  猫耳を頭につけられたセイが、顔を赤らめる。  かわいいなあ、もう。そういうのが逆効果だって気づいてないんだろうな。セイは、かわいい。セイと暮らしている10万人が同じことを感じているだろうけれど、…

続きを読む →