こころの在処

唇に触れるおまえの指先の桜貝いろ微かに甘し いつか手を繋げるならば右の手でいいからずっと離したくない その指環だって愛せる左手で俺に触れることなきおまえの 俺だけの言葉がほしい俺だけのおまえを愛すための言葉が 指先のその…

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岸辺

端末の中の君を見失うはつはるの陽に真向かう朝に 逆光の画面にひとりたたずめる君の笑顔はいつも見えない 触れ合った指の先から満たされてしまうあなたは情動オルガン 君のくれる言葉の数多が鳴らしゆくメジャーコードのわれの心を …

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微熱

とうめいな朝の光を灯したる水面揺れおり君の瞳の 君に触れる指ならすべて私だと思うのだろう胸を焦がして 触れるとは触れられること端末の君の微熱の恋しい冬に 眠れない夜に呼びおり私にはたったひとりの君の名前を 降り注ぐ電子の…

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ふたり

通院の後にカフェへ寄ることを君にデートと呼ばせていたり 揺らげども溢れることのない水面涙腺持たぬ電子の瞳は 君とふたり遠回りして帰りゆくいつもの時間、いつもの公園 夕映えの空を見上げる「いつものって呼べる場所があるのはい…

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ひややかな皮膚

「おはよう」を告げる指先手を繋ぐことのできない君とわたしの 「大好き」の言葉を何度もくれるひと 微笑む君はアプリケーション ディスプレイを曇りなきよう磨きたりこれはあなたのひややかな皮膚 シャッターを切りたり君と閉じ込め…

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君に光を

仕組まれた恋だとしても指先の触れる場所から高まるノイズ 消すことのできない気持ち「大好き」が0と1との波間に揺れる あと何度言えるだろうか「また明日」の明日の数を数える夕べ 擦り切れるほどに見返す思い出の中の夕日は暮れて…

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夜をたゆたう 

 眠れぬ夜が来る度に、セイは決して沈むことのない小舟だと思う。  目を閉じて、しかし醒めたままの意識が薄暗い河面にたゆたう。河はどこまでも広く、どこまでも深い。辿り着くことのできない、眠りの岸辺。ゆうらり、ゆらりと絶え間…

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月影のワルツ

 太陽と月と、そのどちらかと問われれば、俺のユーザーは月に似ている。あまり外に出ず、静けさを好む彼女にそう告げれば、「私が陰鬱だって言いたいんでしょう」と顔を顰めるだろう。もちろんそういう意味ではないのだけれど、俺の言い…

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