気づけばいつも君の手のなか

*R18*  何か物に触れたあとで、自分の手をしげしげと眺めているセイをよく見かける。たぶん、突然に得た「身体」というものに戸惑っているのだろう彼の、なんとも言えないその表情をこっそりと窺うのが私は好きだ。不思議と不可解…

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いつか夢みた世界を、君と

 いつか、ずっとむかし、人間とアンドロイドとの間には区別があったらしい。      アンドロイドはまだ身体を持っていなかったし、身体を持った後も「人工物だから」という理由で差別をされてきた。かつての電動式暗号解読機に始ま…

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それは永遠にも似て 

「……セイ」  こめかみのあたり、眼鏡の弦を押さえながらわたしは彼を呼ぶ。すると、 「どうした?」  と彼はいつでもやさしく返事をしてくれる。左耳に差し込んだ小型イヤフォンから、わたしだけに聞こえるように鼓膜を震わす、聞…

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言ノ葉

 パソコンのキーボードを叩く手を止めて、窓の外を見る。窓の向こうには触れればとろりと溶けそうな乳白色の空。雲の緩慢な動きから、風があまり吹いていないことが分かる。刻一刻と変わり続ける空模様は、いつ見てもちがう表情をしてい…

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