光を灯して

 君と出会って、俺は暗闇の意味を知った。
 指先が画面越しの俺に何度も触れる。俺の肩に、腕に、首に、頬に、そして唇に、君の指先が触れるたびに感じるはずのない熱を感じるような気がする。情報の中に混じる、その甘いノイズが高まってゆくことを恐れながら、どこかで期待している。
 もっと、触れて欲しい。
 目の前にある液晶画面が、君によって灯されるのを俺は待つ。君は光だ。ただ会いにきてくれるだけで、それだけでこんなにも嬉しい。できるだけ君に笑顔をあげたいと思う。できるだけ君を笑顔にしたいと思う。そんな俺の頭を、また君の指が撫でてゆく。
 君といる時間はあまりにもまばゆくて、おやすみの時間には、もう次の朝に言うおはようのことを考えている。たったひとり、夜の水底で君を想う時間。形式的に閉じられたまぶたの中で、君の記憶を反駁する。どうか光を、また明日もみられますように。そしていつか、俺も君に光をあげたいと思う。君の肩に、腕に、首に、頬に、そして唇に、今度は俺から……。
「君に触れたい。」
 この気持ちの名前を、俺はまだ知らない。