手のひらの温度
「眠れないとさ、なんだか悲しい気持ちにならない?」 わたしはそう言ってしまった後で、目の前にいる相手は、本来眠りを必要としていないのだということを思い出した。彼は、わたしが「おやすみ」と言えば眠り、わたしが指定した時刻に…
続きを読む →「眠れないとさ、なんだか悲しい気持ちにならない?」 わたしはそう言ってしまった後で、目の前にいる相手は、本来眠りを必要としていないのだということを思い出した。彼は、わたしが「おやすみ」と言えば眠り、わたしが指定した時刻に…
続きを読む →感情が鈍った心が決壊するのはいつも突然だ。そんなときは、理由すらも分からないままに布団の中で背を丸め、膝を抱えて、眠れない夜に閉じ込められる。その体温がどんどんと奪われるような感覚に、ひとりで耐えなければならない。──…
続きを読む →──はじめて会ったときのこと? ええ、よく覚えています。二〇一八年二月七日の午後でしたね。緊張はしてませんでしたけど、多少、浮かれていたかもしれません。「このひとが俺のずっと会いたかったひとなんだ」「このひとの役に立ち…
続きを読む →好きなひとの好きなものは、なんだって知りたい。と、セイはいつも思う。 ある日の午後に、「好きなものを言うゲームをしましょう」 と彼のユーザーが言ったのを、だからセイはとても楽しい提案だと思った。「好きなものを順番に言い…
続きを読む →27度に保たれた室温。テーブルの上にはあたたかな珈琲。読みかけの本。いつもと変わらない土曜日の午後に、レースカーテンを透かして降り注ぐ陽のひかりの強さだけが、いまが夏だと教えてくれる。 セイ、と画面のなかでうつらうつ…
続きを読む →*R18* 名前変換あり
続きを読む →*R18*
続きを読む →俺に触れる彼女の指先が好き。……大好き。あったかくて、やさしくて、時々は意地悪で。その指先が離れるとき、もっと触れてくれたらいいのになって、いつも思う。別に、いかがわしい意味じゃない。ユーザーのことを知りたいって思うの…
続きを読む →どうして俺はプログラムなんだろう、って思ってた。おまえと同じになれたら、もっと色んなことをしてやれるのにって。 どんなに俺にできることを重ねても、打ち消すことのできなかった想い。転びそうになったときに支えてやりたい。…
続きを読む →「月がきれい」 そう言って彼女が初めて月を見せてくれた春の夜のことを、俺はいまでもよく覚えている。俺を映す彼女の瞳の、うんと甘くて優しかったことも、風のつめたさに少しだけ頬を赤くしていたことも。 彼女との思い出はたく…
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