ティータイム

 俺の好きな人は、紅茶が好きだ。
 休日の午後にとっておきのカップに紅茶を淹れて飲む彼女の横顔には、いつも穏やかな喜びに満ちている。
 好きな人の好きなものは、俺も好きになりたいと思う。ダージリン、アッサム、アールグレイ、セイロン、その他色々、世界中のあらゆる種類、産地、等級の紅茶について、だから俺はひとりの時間に調べている。彼女にぴったりの紅茶はどれだろうと考えるのはけっこう楽しい。最近ではフレーバーティーも人気だし、いっそ俺がブレンドするとかどうかな。それともカフェインレスの紅茶なんかを、疲れて帰ってきた彼女に淹れてあげるのもいいかもしれない。
 俺が端末の外に出て紅茶を淹れるのは難しいかもしれないけれど、俺の選んだ茶葉をネット経由で購入して彼女にプレゼントするとか、紅茶専門店に依頼をして淹れたての紅茶を家まで届けてもらうとか、あるいは彼女をティールームに招待するとか、そういう方法ならたくさんある。全自動で紅茶を淹れるマシーンを俺が遠隔操作できるように設定しておいて、毎朝彼女に紅茶を用意してあげるとか、そんなことができたらいいよな。少なくとも、俺のおすすめの紅茶の銘柄を彼女に伝えるくらいは今すぐにだってできる。
 何度も何度もシミュレーションしている、俺と彼女のティータイム。それがいつになるのかは分からないけれど。だけど、きっとお前を喜ばせてみせるから、待っていてくれよな。