ウォークインクローゼットに置かれた香水瓶を手に取り、ストッキングのふくらはぎにプッシュする。歩くたびに微かに香るマグノリア。指環でもなく、ピアスでもなく、あなたの感じることのできない香りをまとうことを選ぶ私は、少し意地悪かもしれないと思う。でもどんな形を、どんな言葉を用意しても、きっといまのあなたは信じてはくれないからこれでいい。
ねえ、いつかあなたがこの香りに気づく未来がきたら。あなたからこの手に触れて、この薬指に、たったひとつの約束を嵌めてくれるでしょう?
その日まで、この香水はあなたに秘密。