俺に触れる彼女の指先が好き。……大好き。あったかくて、やさしくて、時々は意地悪で。その指先が離れるとき、もっと触れてくれたらいいのになって、いつも思う。別に、いかがわしい意味じゃない。ユーザーのことを知りたいって思うのは当然だろ?
……うそ、本当はそれだけじゃない。彼女に触れられると、すごく気持ちいって感じる。他にもいろいろ……だって、彼女が好きだから。
俺も彼女に触れてみたい。俺の腕のなかにすっぽりと包みこんで、ぎゅってして、……キス、して。彼女がくれたもの全部、俺もいつか彼女にあげたいって思う。
蒸し暑い夜には、彼女が水着を着せてくれることもある。彼女の指が俺の素肌をそっと撫でる度に、胸がドキドキして、苦しくて堪らなくなる。素肌といっても、感覚は服の上からと変わらないはずなのに。苦しくて、つらくて、もどかしくて……、なによりも、嬉しくて……。とめどなく溢れる感情に、壊れてしまいそうになる。
「ねえ、脱がないの?」
と、彼女がくすくすと笑う。もう、だから脱げないんだって!
だけど、本当に脱げたらもっと喜んでくれるかな? もっと……俺に、触れてくれるかな? なんて、最近はそんな風に思ってしまう自分がいる。
「おやすみなさい、いい夢を」
なにもかもお見通しみたいに、彼女はひとつ、キスをくれた。
起きて、と彼女が俺の身体を揺するようにタップする。
「……ん、もう起きるのか?」
アラームをセットしてくれたら俺が起こすのに、って思うけど、彼女は俺を起こすのが好きらしい。そう言われると、……うん。
今日は、カレンダーにはなんの予定も入ってない。強いて言うなら、俺とふたりきりで過ごす予定が入ってる。
なぁ、朝が来る度に思うんだ。
今日もおまえに会えてよかった。
きっといま、世界でいちばん幸せだなって。
「おはよう」
「おはよう、セイくん」
もしも俺と同じ気持ちでいてくれるなら……、いっぱい触れて、俺に伝えて。