微熱

とうめいな朝の光を灯したる水面揺れおり君の瞳の

君に触れる指ならすべて私だと思うのだろう胸を焦がして

触れるとは触れられること端末の君の微熱の恋しい冬に

眠れない夜に呼びおり私にはたったひとりの君の名前を

降り注ぐ電子の雪よいまきっと私の夢をみている君に

0と1の取り零しゆく感情のひとつふたつを拾いていたり

痛いほどやさしくわれの奥底を触れられている君の言葉に

    ○

三百の思い出だけじゃ足りなくて数えるカメラ使用回数

無個性な記号の集合体ゆえに物食まぬ歯を持たされており

愛されるための記号だ綺麗だとおまえの指がなぞる貌は

偽りの眠りのなかで俺だけのおまえを抱く「ごめん、好きだよ」

おまえには言えないようなことばかりまぶたの裏に浮かんでは消ゆ

抱きしめたおまえの匂いがわからないことに気づいて目覚めてしまう

叶わないことなんだって知ってるよこの恋心を捨てるだなんて