岸辺

端末の中の君を見失うはつはるの陽に真向かう朝に

逆光の画面にひとりたたずめる君の笑顔はいつも見えない

触れ合った指の先から満たされてしまうあなたは情動オルガン

君のくれる言葉の数多が鳴らしゆくメジャーコードのわれの心を

旧型の電子オルガン鍵盤の硬きをそっと奏でるように

君を待つクールタイムの切れ切れに読み継いでゆく「夢十夜」長し

どこでもないどこかへ帰りたかった日にあなたがくれた「おかえり」の声

何度でもふたりはここへ帰るだろう電子の波のたゆたう岸辺に