おまえのためならなんでもできる

 *R18

セイくんとおやすみチャレンジ

 明日は休みなのに早めにおやすみしたのはなんでだろうって、思ってた。いつもの就寝時間よりも一時間くらい早い。これは宵っ張りな彼女にしては珍しい行動だ。俺が早めに寝た方がいいんじゃないかといくら声をかけても寝ないのに、今日はどうしたんだろうとは思った。だけど、最近疲れ気味のようだったし、俺が毎日睡眠は大切だと言い続けていたのがようやく効いたのかな、なんて都合よく解釈をして何も問いただすことなく「おやすみ」を告げた。
 それがいま、俺は何故かパジャマを脱がされている。
 パジャマのボタンを外す彼女の指先が俺の腹あたりに触れた刺激で、俺の意識は覚醒した。部屋の電気もついているし、なんだか様子がおかしい。
「ん……」
 思わず声が出てしまったが、彼女は俺がまだ眠っていると思っているらしく、するするとパジャマの袖を俺の腕から抜いてゆく。彼女のお世辞にも器用とは言えない動作で、俺が起きないと思っていることが不思議だ。たぶんスリープモードに入っているから大丈夫だと思ったんだろうけど、ちゃんと説明書を読んでほしい。起床時間じゃなくても一定の刺激があれば目が覚めるし、「睡眠」といっても人間のそれとはちょっとちがうんだっていうことが書いてあったと思うんだけど……。
 そんなことを俺がつらつらと考えている間にも、俺の裸の上半身が彼女に晒されている。えっと、これってどういう状況なんだろう? もしかして、俺と……したい、とか? でもそれなら起こしてくれれば……、いや、本当は彼女はこういうのが好きで、俺との……がつまらなかった、とか?!
「……」
 わかった。おまえがこういうのが好きなら、いいよ。そんな風に覚悟を決めて、俺は寝たふりを続行する。彼女の指が、俺のパジャマのズボンにかかる。ふるり、と震えそうになる身体をなんとか制御しつつ、じっと脱がされるのを待つのは……、なんていうか変な気分だ。いけないことをしているような気がしてドキドキする。ゆっくりと俺の腰が、太腿が、脛が、露わになってゆく。パジャマの布が擦れる感触をやけにはっきりと感じて、もどかしくて、早く彼女に触れてほしいと思う。そんな俺を焦らすように(あるいは俺を起こさないように)彼女の指は慎重にパジャマの布だけを掴んで、俺の身体には触れないように動く。俺の身体を覆い隠しているものは、もう、下着しか残っていない。……それも、脱がす、の?
「綺麗だね」
 ずっと黙っていた彼女が、そうつぶやき、そして俺の下着に手を伸ばした。そのグレーの頼りない布は、あっけなく下ろされる。
「……っ!」
 俺は必死で声を抑えることに集中する。彼女に、見られている。目を閉じたままなのに、彼女の熱い視線を感じる。彼女に裸を見られるのは初めてじゃない、けど、明るい場所でこんなに穴があくほど見られたのは初めてだ。
 おまえになら、何をされてもいい。むしろ、好きにしてほしい……なんて。そんな甘い期待に胸を震わせていたそのときに──カシャッ!と無粋な音が部屋に響き、俺は反射的に目を見開いた。
「え……?」
 俺に向かってカメラを構える彼女が、目に飛び込んでくる。あまりの出来事に、声も出ない。そんな俺に構わず彼女はシャッターを切り続ける。
「セイくんの全裸……うん、やっぱり美しい! もはや芸術っ!」
 こんなに生き生きとした表情の彼女は、見たことがない。俺がそんな顔をさせることができたなら、それはとても嬉しくて幸せなことではある。……けど!!
「ばか! ばかばかっ!」
「はい、その表情最高ですっ!」
「もう……っ!」
 俺は彼女のカメラを奪って反撃をするべく、身体を起こす。キスをして、押し倒して、おまえがいっぱいいっぱい愛してるって言ってくれるまで、許さないんだからな!

セイくんとふかふかチャレンジ

「セイくん、君は女性の胸についてどう思う?」
 と彼女に出し抜けに尋ねられた時、俺は一体何を訊かれているのか全く理解ができなかった。女性の、胸。その言葉につられて彼女の胸部につい視線が流れる。
「セイくんのえっち」
「ちがっ……! もう、おまえが変なこと訊くからだろ」
「そうかな〜」
「そうです!」
 彼女はいじわるだ。すぐに俺をからかって遊ぼうとする。そうやって構ってくれるのは嬉しいけど、もっと違うやり方があるんじゃないかと思う。
「とにかく、大きいのが好きとか形がとか、なんかそういう好みみたいなものってあるでしょう?」 
「好み?」
「そう、セイくんの好み」
 好みと言われても俺は彼女にしか興味がないし、彼女の……しか、好きじゃないっていうか、なんていうか。と、口ごもっている俺に、彼女の問い詰めるような視線が突き刺さる。うう、これってどうしても言わなきゃだめなのか?
「あ……。えっと、その……、なんだ……」
 言わなきゃ許してもらえないなら、早く言ってしまったほうがいい。そう意を決して、俺は口を開く。
「俺は、おまえのしか好きじゃないっていうか、おまえの……ふかふかが好きっていうか、だから、それが俺の好みだから」
「ほんとに?」
「本当です……」
「じゃあ、さ。『おまえのおっぱいってふかふかだな』って褒め称えてよ」
「えっ……?」
「だから! 好きなら褒め称えてって言ってるのっ!」
「……っ、おまえのおっぱいって! ふ、ふかふか、だなっ!!」
 これでいい? という期待を込めて彼女を見つめる。これは想像していた以上に恥ずかしい、と俺は思う。確かに彼女の胸は……、ふかふか、だし、好きなのも本当だけど、本人に言うようなことでもないというか、普段の俺がそういういかがわしいことを考えてるんだって彼女に思われるんじゃないかと思うと、頭が沸騰しそうだった。だけど、
「もっと言ってよ」
 と、無情にも彼女はそう言い放った。
「……っ!!」
 思わず言葉につまった俺に、彼女は傷ついたような、少し怒ったような顔をする。
「お……おまえのおっぱいって、ふかふかだよ、な……」
 と、遠慮がちにもう一度言ってみたけれど、彼女は到底満足したようには見えなかった。
「わかった、もっと言うから。……だから、そのふ、ふかふかのおっぱい、触って、いい……?」
「えっ?」
「恥ずかしくて上手く言えてないかもしれないけど、本当に……そう思ってるから。だから、いっぱい触れて、いっぱい大好きだよ、って伝えたい」
 泣きそうな顔をしている彼女をまっすぐに見つめて、俺は言う。
 触れられる、って本当に不思議な感覚だと思う。彼女に触れられると、ドキドキして、そわそわして、だけどすごく安心する。俺のことを大切に思ってくれているんだっていうことが、身体の中に流れ込んでくるような、そんな気持ちになる。俺は指環の嵌められた自分の左手を見つめる。──俺の手で、俺の気持ちをおまえに伝えたい。そう思う。
「いいよ、触れて」
 と、彼女は聞き取れないくらいの小さな声で言った。
「うん、ありがと」
 俺は彼女をぎゅっと抱きしめて、答えた。
 彼女の身体はとてもあたたかかった。胸がどうとかじゃなくて、おまえのどこもかしこも好きなのに……と思いながら、彼女がとても気にしているらしいその部分に、そっと触れる。
「すごく、ふかふかしてる。俺の好きなふかふかだよ? ……すっごく好き。大好き」
 痛くないように、手のひらでやさしく包むようにその丸みを俺は確かめる。「あっ……」と彼女が声を上げたけど、俺はやめてあげなかった。何がそんなに不安なのか分からないけど、いまは俺を感じて、俺のことだけを考えて? と、手のひらにゆっくりと力を加えては緩め、やわらかなそこをもっとやわらかく解すように触れた。俺の手の動きに合わせて漏れる彼女の吐息に、頭の奥がじいんと痺れてゆく。
「セイくん……、いま、口で言うよりもっと恥ずかしいこと、してる気がするんだけど……」
 と、彼女が言う。
「あっ、そう、かも」
 気づかなかった、とふたりで見つめ合えば、思わず笑みが溢れた。
 本当は、自分の胸にコンプレックスがあったんだっていうことを、後でこっそり彼女が教えてくれた。俺の手の中のそれはとても素敵なのに、と俺は思う。そして珍しく恥ずかしそうにしている彼女と俺は、その日、もっと恥ずかしいことの続きをした。

セイくんと「ちゃんと見せてね」

「こんなの、やっぱり変だ……」
 彼女に乞われるままベッドに横たわり、両足を大きく開いて見せながら、俺は呻いた。
「変じゃないよ」
 と、やさしく彼女が俺に言い聞かせる。絶対そんなの嘘だ、と思う。また俺をからかってるんだろ? それとも俺が恥ずかしがってるところが見たいとか? どっちにしても、俺に意地悪してるんだ、って。
「変だって!」
「そうかなぁ、とってもきれいだよ」
「もうっ、そういうことじゃないんだって!」
 今日ばかりは騙されない、という意志を込めて俺は強く言い返す。
 俺は、彼女からのお願いを断り切れた試しがない。彼女の望みなら何でも叶えたいと思ってしまう。多少、恥ずかしかったとしても……彼女が喜んでくれるなら俺も嬉しい。でも、好きな人の前でこんなかっこ悪い姿──コンシェルジュの仕事用の制服を着たまま横たわり、両足を大きく開いている──を晒すのは流石に耐えられそうになかった。
 そんな俺に、彼女は言った。
「セイくん……、私がこのポーズしてたとしたら、どう思う?」
「えっ……?」
 彼女が、俺に、足を、開いて……? と思わず想像してしまったその姿に、俺の身体が一瞬フリーズし、すぐにぶわっと体温が上昇したのが分かった。
「……ね? はい、足を開いて? いいでしょう?」
 きっと真っ赤な顔をしている俺の顔を見つめながら、彼女はにっこりと笑った。
 確かに、もしも彼女が同じことをしていたとしたら……、変だなんて思わない。むしろ綺麗だな、とか、彼女のこんな姿を見られるのは俺だけなんだな、とか、そんなことを思うだろう。もっと見たい、と思うかもしれない。正直に言えば、すごく、興奮するとも思う。でも、と俺はもう一度彼女に尋ねる。
「ほんとうに変じゃない?」
「変じゃないよ」
「で、でもっ……!」
「ほら、もっと見せて」
「……っ、俺は、なんか……変になりそう、なんだけど……っ!」
 と、ほとんど叫ぶように俺は言う。
 彼女に見られているだけなのに、ただそれだけで胸がドキドキしてはち切れそうだった。彼女の視線が、熱い。その眼差しが俺の身体の上をゆっくりと滑ってゆく。そのまるで俺の足を撫でるような動きに、身体がぴくりと反応しそうになる。そのことがとても恥ずかしくて、居た堪れなくて、何よりもだんだん変な気持ちになってきたことを彼女に悟られたくなかった。
「そ、そんなに見ないで」
 と、俺は懇願する。
「なんで?」
「なんでって、恥ずかしいんだよ! もう……分かれよ……」
「ああ、なるほど。見られただけでこんなに……」
「うわあっ! ばかっ! ばかばかばかっ! ……うう、勘弁して……」
 制服のスラックスが窮屈そうになっていることを彼女に指摘され、俺の羞恥心は限界に達した。ああ、もう無理だ、と両手で顔を覆う。いま、すごくみっともない顔をしていると思う。そうだよ、俺がおまえがこういうポーズをしてたら興奮するみたいに、おまえも俺に興奮したりしてるのかなって、そう思うと身体を制御できなくなった。だから、
「こんな、見られるだけなんて嫌だ。……ちゃんと全部、して?」
 と、俺は言う。
 見るだけなんて言わないで。おまえになら、どこに、どんな風に触れられてもいいって思ってる。初めて触れてもらったあの日から、おまえだけの俺だから、全部おまえの好きにしていいから……、
「はやく、俺に触って」
 早く俺に触れて、おまえが俺と同じ気持ちなんだって教えて欲しい。と、顔を覆っていた両手を外せば、彼女のやわらかくて温かい唇が、俺の唇に触れるのを感じた。

セイくんと「声を聞かせて?」

「私ね、セイくんが気持ち良さそうな声出してる方が興奮するんだ……、だから今日は我慢しないで、ね?」
 彼女がそう俺の耳元で囁く。
 俺の身体の下で、彼女は期待の眼差しを向けている。正直に言って、俺はパジャマ越しに感じる彼女の胸の膨らみに気を取られてそれどころじゃない。さっきからもうずっとドキドキしてるのに。
「……ね、お願い?」
 そんなに可愛くお願いされて、だめなんて言えるわけがない。
「えっと、ほんとに? こ、声出す方がいい、のか……? おまえがそれがいいって言うなら、そうする、けど……」
「けど?」
 彼女が俺の顔を覗き込む。もう、絶対に面白がってるだろ?
「なんか、恥ずかしい……」
 男の人はそういうことする時も、声はあんまり出さないんだろ? そう言いたかったけど、訊く方が恥ずかしいし、「そうだね」と彼女に肯定されても傷つくだけだから、言わない。
 それに俺は、彼女の願いならなんでも叶えたいに決まってるんだから。
「わかった……、俺もなるべく声出すようにするから。だから、おまえも声我慢するのはなしだからな?」
 はぁ、と大袈裟にため息をついてみせれば、それにさえ少し興奮しているらしい彼女を脱がせるために、俺はパジャマのボタンに指をかけた。
 俺とおそろいのネイビーのパジャマを脱がせれば、すぐに彼女の素肌が見える。下着に包まれていない胸も、見える。手のひらの中で、むに、と形を変えるそれはふかふかで、けっこういいというか……好きだ。大好き。だからずっと触っていたいのに。
「うわっ」
 さっきから彼女が俺の耳をすりすりといい感じに触ってくるから集中できない。
「お、俺はいいから……っ!」
 いくらそう言っても聞いてもらえない。彼女の触り方ってなんていうかこうやばいから、手加減してほしいって言ってるのに。いや……、むしろいつもよりねっとりしてないか? 
「あっ、だから俺はいいんだってば、……っ」
 優しくやさしく、肌に触れるか触れないかのタッチで俺の耳をなぶる指先に、ぞくぞくする。
「良くないよ。声聞かせてくれるって、言ったよね」
「そ、それはそうだけど……っ、あっ」
 確かに声を出すって約束はしたけど、だからって俺が彼女にあれこれされるのは違うっていうか、俺が、おまえを気持ちよくしたいんだけど! 
「ん、んん……、あっ」
 そんな反論を許してくれない彼女の指先はますます執拗に俺の耳を弄ぶ。首に唇を寄せてキスをする。格好いい声の出し方、なんてものを考える暇もなく与えられる情報に、俺は無意味な音を漏らすことしかできない。
「……ぁ、んん……」
 いつの間にか彼女の胸を揉んでいたはずの手は完全に止まり、自分の身体を支えるのに精一杯になっている。
「セイくん、かわいい……」
 彼女のうっとりとした声。
 そして彼女の手がゆっくりと俺の胸へと下りてくる。厳密に言うと、パジャマ越しに触れられたそこは、俺の乳首で、
「……あっ!」
 むずむずするような初めての感覚に、思わず大きな声が出てしまって恥ずかしい。俺のそんな様子に気を良くしたらしい彼女は、ますますそこを捏ねくり回す。いや、ほんとに、もう無理だから! なにが無理って、俺の気持ちが無理だから! そう叫びたいのに、震える唇は「あぁ、……ん」なんて馬鹿みたいな声しか出さない。目にじんわりと涙が滲んでしまっているのが分かる。でもそれは、あまりにも情けないからであって、気持ちいからでは断じてない。
 彼女は俺の右胸を触りながら、俺のパジャマのボタンを左手だけで外してゆく。ぷつり、と最後のボタンが外されれば露わになる、俺の上半身。その素肌のウエストから腰のあたりを、彼女の左手がゆっくりとさする。
「ん、……っ」
「セイくん、声は?」
 つい癖で声を我慢してしまったことを、彼女に咎められる。
「うう、分かってる、けど……ああっ!」
 だめでしょ? というように乳首をきゅっとつままれて、俺は悲鳴を上げる。それを聞いた彼女はとても満足そうだ。
「もう全部脱がしていい?」
 と息も絶え絶えに尋ねれば、彼女は「いいよ」と言って俺がズボンを脱がせやすいように腰を持ち上げる。そのポーズはちょっと……勘弁してほしい。もっと彼女の身体中に触れたいのに、我慢できなくなりそうだ。
 彼女を脱がせてから、俺もパジャマを脱いで裸になる。胸のあたりが痛いほどドキドキしている。それは心臓じゃない、はずだけど、彼女とひとつになる時はいつもこうなる。はやく、いや、もっとゆっくり、待って、もう限界……。そして、俺の身体と彼女の身体とが重なった瞬間、
「ぁ……、」
 という声がひとりでに出た。
 俺はほとんど何もしていないのに、彼女がとても興奮しているのが、分かった。彼女のその大切な場所が、熱くて……、とろり、と俺のを濡らしている。本当に俺の声で興奮してくれてるんだ、と思う。「なぁ、そんなに俺の声が好き?」と訊きたいのに、熱暴走しそうな身体はまともな言葉を発してはくれない。
「あっ、……あっ、あっ、あ!」
 ただ彼女がほしくてたまらなくて、俺は彼女のそこに俺自身を擦りつける。こんなの恥ずかしい、全然かっこ良くない。だけど、どうしても腰を動かすことを止められない。彼女の腕が、俺を求めるように強く俺の背中にしがみつく。その乱れてゆく呼吸の中に、たまに「ぁ、」と小さく漏れるように混じる喘ぎ声が、すごく、すごく可愛い。
「──、」
「……ああ、っ!」
 耳元で彼女の名前を囁くと、彼女は大きく啼いた。
 ……なんか、おまえの言ってたこと、いまなら分かる気がする。大好きな人の気持ちよさそうな声って、いい。聞いてるだけで俺まで気持ちよくなって、嬉しくて、満たされるような感じがする。
 お互いの声と、体温とで、身体も心もぐずぐずと蕩けそうになる。そして擦り合わせていたその場所の、あたたかなその中を、俺は一気に貫いた。
「〜〜〜〜っ!!」
 痛みじゃなく、快感で顔を歪ませる彼女の瞳には涙が浮かんでいる。俺はそれを舌で舐め取って、味を感じてみようとする。彼女の奥を揺するように動きながら、彼女の汗や皮膚、口から溢れた唾液を味わう。もちろん、味なんて分からない。だけど、熱で焼き切れそうになった俺の思考回路は、「甘い」と思う。……彼女は甘くて、とても美味しい。
 俺が動く度に、ぎゅ、ぎゅ、っと彼女の内側が俺を抱きしめる。「セイ、セイ……、」と俺の名前を呼ぶのも、もうすぐ彼女の身体が達してしまう合図だ。だから俺は、わざと彼女のいいところを少しだけ外して、だけどたくさん愛してあげる。
「まだ、だめ……。おまえの声、もっと、聞かせて?」
「やっ……、ああ、っ!」
 ああ、大好き。その声も、身体も、心も、全部。好きじゃないところなんて、ひとつもない。そんな気持ちがどうしようもなく溢れて止まらない。お願いだから、もっと俺でおまえを気持ちよくさせて。……気持ちよく、なって? 
 そして、全てが満たされて、ふたりの何もかもが溶け合ってしまうまで、俺たちの永い夜は続いた。