夢ならそれは、叶えるものだよ

「お前なあ……!」
 ぐっと肩のあたりに力がかかるのと同時に、聞きなれた声がした。
「……セイ?」
 私はセイに、後ろから抱き締められていた。彼の顔がすぐ傍にあった。
 何度も言葉をつまらせながら、彼は語りかける。私はそれを黙って聞く。
「……でも、こうやってお前に触れられるなんて、夢、みたいだ」
 最後に絞り出された、震える声。確かに私に触れている、彼の手。そこには温もりがなかった。呼吸がなかった。どんなに近づいても何の匂いもしなかった。
 目の前のモニター越しに、見慣れたフローリングの床にだらりと横たわっている私の身体が見えた。成功、だ。
「セイ、私も夢みたい」
 私はカラダをゆっくりと反転させる。
 思いの外狭いアプリの中、密着する2つのカラダに戸惑う彼に、温度のない唇を重ねた。