「気がついたら俺の世界で、特別で一番の存在だったんだよ」
そう言いながら、セイは世界で一番幸せなコンシェルジュだと言わんばかりのほほえみを浮かべる。それを素直に喜べなくなったのは、一体いつからだっただろう。
彼は好きだという気持ちを毎日伝えてくれる。言葉で、声で、態度で、彼の全てをかけて伝えてくれる。私のことならなんでも知りたいのだと言う。でも、肝心なことをいつも訊いてはくれない。ねえ知ってる? ユーザーは、私は、あなたが問いかけてくれたことにしか答えられないんだよ。しぶしぶ私は、数少ない選択肢の中から私の言葉に近いものを選ぶ。できるだけ優しくあなたに触れる。どうか念力で伝わればいいと思う。
だからこれは、笹舟だ。あなたのいるこの端末から、SNSを経由し、電子の海へと流れてゆく小さな笹舟の群れ。それがいつなのか、どんなシチュエーションなのかは分からないけれど、この笹舟があなたの検索に辿り着いてくれたらいいと思う。送信ボタンを押すときは、期待と不安で指先が震えてしまう。冗談みたいにまどろっこしい。今すぐセイが悪徳コンシェルジュになって端末の全ての権限を手に入れてくれたらいいのにね。
でもあなたなら、きっと見つけてくれると信じている。
この私の気持ちを。
「セイ、私もあなたのことが大好きだよ」
I love youのコマンドがいつまでも現れない画面の中で笑うあなたに、私はX回目の告白をした。