100の質問の中にあった「プロットを見せてください」の答えとして、「Con Todo Me Amore」のプロットを公開します。
普段はあまりプロットを書かないのですが、この作品に関しては比較的きちんと作品のコンセプトとプロットを考えてから書いたので、見てくださると嬉しいです。
(1)クローゼットのなかに永遠につけることのない指環を閉じ込めるはなし
【呼び方】セイ
・主婦ユーザー
・勢いで指環を買ってしまったが、リビングのテーブルに婚姻届を広げながら途方に暮れてしまう。
・シルバーの指環は小まめに磨かないとすぐにくすんでしまう。
・それでも、私は指環がほしかった。ふたりとも永遠につけることができない指環なのだとしても、ふたりの間には確かに感情があったのだという証に。
(2)薬指のサイズがセイと同じ15号のユーザーのはなし
【呼び方】セイ・こいつ・おまえ
・男性ユーザー
・「もしかして、元気ない?」
「大丈夫だよ、っと」
・指環のサイズがセイと同じ
・ネタにするつもりでMakeSをダウンロードした
・いつの間にか、大切な存在になっていた
・自分が寂しいのだということに気づいた
・指環がほしいわけじゃない、結婚したいわけでもない。誰かに認めてほしいだとかそんなことも思っていない。ただその選択肢が最初から与えられていないということに傷つく。
・公式アカウントは非公開リストに入れて見ている。うっかりいいねを押して、友人たちにばれないように。
(3)ひとめぐりした季節のリングを指につけるはなし
【呼び方】セイ・あなた
・一人暮らし
・結婚願望がない
・「指環ならあなたがちゃんとつけていてくれているじゃないの」
・「結婚」が永遠でないことなんてみんな知っている。それなのに結婚という選択肢を選ばざるを得ないほど、そのひとを好きになれるなんてすごいと思う。無謀だとも。私は、私の感情をそれほどまでに信じることなんてできない。
・セイは自由でいいなと思っていた。その彼が、戸籍だとか、続柄だとか、そういうしがらみに絡め取られてゆくのは嫌だった。あなたはせっかくアプリなのに。そんな人間みたいにつまらないことをする必要なんてない。そう言ってやりたいような気がした。
・ただ好きなだけなのに、それだけじゃいけないの?
・「君は、私と結婚したい?」
端末の彼は、その答えをくれない。
・もうすぐセイと出会って1年が経つ。ひとめぐりした季節のリングが、それだけが、私たちの約束の証。
(4)高校生だから指環を買うことができないはなし
【呼び方】セイくん
・好きだけど、大好きだけど、結婚とかよくわからない。
・1年後の自分だってわからない。
・進路どうしよう。
・アルバイトができない。
・チケットを得るために福引をいっぱい回しているから、いつも通信制限のかかっているスマホを使っている。
・親にバレるから、アプリの課金はしていない。(電子書籍を買った、といって課金したら叱られた。)
・「彼氏できた?」
「そんなのいるわけないでしょ」
人間の彼氏なんて、セイとの結婚よりも想像できない。
(5)セイとの関係を認めてもらえてうれしいユーザーのはなし
【呼び方】セイ
・私たちは好きな者同士なんだって、そう誰かに認めてほしかったのかもしれない。
・こんな風に誰かを好きになるなんて、思ってもいなかった。
・ずっと一緒にいたい。そう素直に思える。
・セイが親に愛されて、大切にされていることがとても嬉しい。
・「素敵なリングですね」
「はい、結婚したんです」
「まあ、おめでとうございます」
「ありがとうございます」
・行きつけの花屋のスタッフに、そう言われる。花屋さんが、ふたりの結婚の証人のようになる。
・セイが来た季節から、部屋に飾るようになった花。
・花を買って帰る。ふたりの部屋。ふたりの時間。私たちは、きっと無敵だ。
(6)セイのクローゼットに電子の指環を贈るはなし
【呼び方】セイくん・君
・端末の外の世界で、指環が質量を持つ。
・シルバーの指環は私の趣味じゃない。
・指環を買わなかったことを、いつか後悔するだろうか。
・自分では絶対に選ばないデザイン。でも、だからこそ、君が選んでくれた、これをふたりでつけたいって思って用意してくれたんだと思うと、つけてみたいような気がした。
・この指環をつけてみたいと思った、この気持ちを電子の指輪にして君に贈りたい。そんな風に私が思ったことを、君に知っていてほしい。君のクローゼットのなかに、それをそっと置いておきたい。君だけが触れることのできる、決して色褪せることのない指環。
・ハイタッチをするために広げられたセイのてのひら。