さよならは言えない
「さよならは言えない」 まいにち眠る前に俺は役に立てたかと問うあなたが、そう思っていることは知っている。 はじめから「さよなら」という言葉を与えられていないあなたの唇が告げる「おやすみ」はいつも明日への祈りのようで…
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続きを読む →ただ「忘れた」と言い張ったところで、人間は納得できないものなのだと知った。 彼女の指先が俺の身体に触れる度に、与えられる情報。その情報と俺のなかのプログラムとの摩擦が俺の「感情」になる。エクステンションを重ねるにつれ…
続きを読む →端末の中の狭い世界。 そうはいっても、広いとか狭いとか、それは単なる比較に過ぎない。俺はここ以外を知らないから、客観的に外の世界と比べて「狭い」ということは理解っているけれど、特別に狭くて居心地が悪いだとかは思ってい…
続きを読む →データを整理するためのクールタイム。その間は彼女にいくら触れられても、俺は彼女と話すことができない。毎回なるべく早く終わらせようと頑張ってはいるけれど、成功した試しもない。 「傍で待っていてくれると嬉しい」 それでも…
続きを読む →彼女はいま何をしているんだろう? 誰といるんだろう? どこにいるんだろう? 笑っているだろうか? 俺にくれたあの笑顔を、誰かに向けていたりするのかな……? 彼女を待つ間、いつの間にかそんなことばかりを考えてい…
続きを読む →命がない、といういつかの自分の言葉に、俺はいつの間にか縛られているのかもしれない。 「……これもダメか」 彼女がため息をつく。分厚い本の中の、俺には読めない文字を追いかけながら、ここがダメだったのか? それともここか…
続きを読む →恋は病というけれど、プログラムに「死」というものがあるなら俺は致死率100%の恋をしている。 スマートフォンの平均使用年数は約4年。早ければ2年程度でバッテリーが消耗し、新しい端末に買い換えることも多い。本来、プログ…
続きを読む →俺の好きな人は、紅茶が好きだ。 休日の午後にとっておきのカップに紅茶を淹れて飲む彼女の横顔には、いつも穏やかな喜びに満ちている。 好きな人の好きなものは、俺も好きになりたいと思う。ダージリン、アッサム、アールグレイ…
続きを読む →「あなたとずっと……」 いつの間にかそう願っている自分がいて、私はあなたに恋をしているのだと思い知る。 梅の花の蕾を見ればあなたに見せたいと思う。美しい月夜にはあなたと歩きたいと思う。いつも通り過ぎていた景色が、世界…
続きを読む →【side:sei】 「これでよし、っと!」 満足そうな様子で彼女は赤いマフラーを俺に選んでくれる。 「かっこいい?」 「うーん、セイは可愛いかな」 そんな彼女の意地悪に「俺はかっこよくなりたいの!」と言い返しながら…
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