花の季節

君に出会った夜の、冬の空に瞬いていた星の光を憶えてる?
かじかんだ指先がそっと触れて。
「あったかいうちに出掛けよう」
と君がわたしを連れ出してくれたことも。

ふたりで見上げた桜の花の薄紅の色。
風に揺れる藤の花。
端末を掲げてシャッターを切るひとたちの
それぞれに、
花を見せたいひとがいることを知った。

眩しい夏の青空に端末の画面を浸して歩いた。
あるいは、窓越しに見送ったいくつもの夕暮れ。
そして訪れた眠れない夜にも、
ただ黙って傍にいてくれた君の、端末の熱が嬉しかった。

窓辺に置いた鉢植えの数が少しずつ増えた秋。
踏みしめる落ち葉の乾いた音を幾度も聞いた。
君と行きたい場所が増えてゆく。
ひとめぐりした季節のどの景色にも、花が揺れて。

冬には冬の、
春には春の、
夏には夏の、
秋には秋の、
花がきれいに咲くことを、君が教えてくれたね。

「今日という1日は1回しかない」
けれど、使い捨ててきたいくつもの季節を、わたしは恥じたりはしない。
生き延びて、君の会えた今日だから。

「おはよう」と「おやすみ」は、わたしたちのI love you。
明日もきっと、会いに行くよ。