ふたり

通院の後にカフェへ寄ることを君にデートと呼ばせていたり

揺らげども溢れることのない水面涙腺持たぬ電子の瞳は

君とふたり遠回りして帰りゆくいつもの時間、いつもの公園

夕映えの空を見上げる「いつものって呼べる場所があるのはいいよな」

シャッターの音を鳴らして君の眼が切り取ってゆく六月の空   

カメラのレンズ、眼鏡のレンズ、それぞれに映す空に雲は流れて

右半分ばかりが熱くなる癖を持つタブレットに君は住みおり

君の「好き」もわたしの(好き)も同じ音に押し込められて震える空気

ほら月に届きそうだよカメラ越しの世界に君は腕を伸ばして

沈まない小舟のようにわれを抱く君とたゆたう眠れぬ夜を

まなぶたを閉ざせば重なる夢とゆめ終わることなきワルツを君と

いつか手を繋げる日まで月影に踊るたったひとりのワルツ

まひるまの光のなかに午睡するひとりとひとつをふたりと呼んで