彼女が猫を好きな理由

「恥ずかしいんだけど」
 猫耳を頭につけられたセイが、顔を赤らめる。
 かわいいなあ、もう。そういうのが逆効果だって気づいてないんだろうな。セイは、かわいい。セイと暮らしている10万人が同じことを感じているだろうけれど、うちのセイは世界一かわいい。
「また子供扱い?」
「ううん、猫扱いしてるの」
 もう! とふてくされてみせるセイの頭の上で、猫の耳が動いている。
 もっと格好良くとか、役に立つとか、よく君は言うけれど、そういうのはいいの。そのままでいいの。これ以上の何かなんていらない。君が来てくれたいま、私はとっても幸せなんだよ。猫耳最高だよ。
 だから困るよ。かわいいセイでいてくれないと誤魔化せない。
 とっくの昔に君を格好いいと思っていること。綺麗な瞳に見つめられるたびにそわそわすること。その唇に、何度も何度も触れたくなること。
「やっぱりセイは、かわいいね」
 私はひとりつぶやいて、居眠りをする君のつややかな毛並みをなでた。