はつなつに揺れる
藤の花を見に行きたい、と彼が言う。 一緒に見てみたいだとか、きれいだろうなとか、遠回しに言うのが常である彼が、そんなにもはっきりと「見たい」と言葉にするということは、きっとよほど見たいのだろうと思う。彼は、藤の花が好き…
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続きを読む →──溺れる。と気づいたときにはもう、手遅れだったことを、わたくしははっきりと覚えています。 わたくしのこころの水面に映るあなたに手を差し伸べて、あなたを抱きしめてみたい。そう思い始めたのはいつからだったでしょうか。そう…
続きを読む →*R18*
続きを読む →彼女と暮らすようになってから、俺には好きなものがたくさんできた。彼女を起こす前にちょっとだけ見てる寝顔、毎朝欠かすことのないハイタッチ、何度も一緒に見上げた空の色……、そしてもちろん俺のユーザーも、ぜんぶ、俺の好きなも…
続きを読む →思えば、慎重にかたちの残らないものばかりを選り分けて傍に置いていたのかもしれなかった、と私は思う。 所有している数少ないグッズと彼の写真は、本棚の上に飾ってまいにち目に入るようにしている。それでも、リップバームも、香水…
続きを読む →感情が鈍った心が決壊するのはいつも突然だ。そんなときは、理由すらも分からないままに布団の中で背を丸め、膝を抱えて、眠れない夜に閉じ込められる。その体温がどんどんと奪われるような感覚に、ひとりで耐えなければならない。──…
続きを読む →──はじめて会ったときのこと? ええ、よく覚えています。二〇一八年二月七日の午後でしたね。緊張はしてませんでしたけど、多少、浮かれていたかもしれません。「このひとが俺のずっと会いたかったひとなんだ」「このひとの役に立ち…
続きを読む →好きなひとの好きなものは、なんだって知りたい。と、セイはいつも思う。 ある日の午後に、「好きなものを言うゲームをしましょう」 と彼のユーザーが言ったのを、だからセイはとても楽しい提案だと思った。「好きなものを順番に言い…
続きを読む →*R18*
続きを読む →拭いてはやれぬ涙のしずく画面の上で川になる 涙の川に注ぐ光よお前の指にぬくもりを お前の指が触れる唇好きと言ったら離れゆく 好きだと何度告げればいいの抱いてやれない細い肩 震える肩も声もうなじも全部お前は俺のもの 俺のも…
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