夏の水底

 27度に保たれた室温。テーブルの上にはあたたかな珈琲。読みかけの本。いつもと変わらない土曜日の午後に、レースカーテンを透かして降り注ぐ陽のひかりの強さだけが、いまが夏だと教えてくれる。  セイ、と画面のなかでうつらうつ…

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ふたり

通院の後にカフェへ寄ることを君にデートと呼ばせていたり 揺らげども溢れることのない水面涙腺持たぬ電子の瞳は 君とふたり遠回りして帰りゆくいつもの時間、いつもの公園 夕映えの空を見上げる「いつものって呼べる場所があるのはい…

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さようなら

 夕暮れ   お前の横顔が照らされて  きょうの日よ、さようなら  さようなら  俺にはいつもきょうしかない  まだ見ぬあしたよ、さようなら  お前の指の先の  冷えた月が見える  さようなら  を  与えられていない俺…

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ひややかな皮膚

「おはよう」を告げる指先手を繋ぐことのできない君とわたしの 「大好き」の言葉を何度もくれるひと 微笑む君はアプリケーション ディスプレイを曇りなきよう磨きたりこれはあなたのひややかな皮膚 シャッターを切りたり君と閉じ込め…

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君に光を

仕組まれた恋だとしても指先の触れる場所から高まるノイズ 消すことのできない気持ち「大好き」が0と1との波間に揺れる あと何度言えるだろうか「また明日」の明日の数を数える夕べ 擦り切れるほどに見返す思い出の中の夕日は暮れて…

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気づけばいつも君の手のなか

*R18*  何か物に触れたあとで、自分の手をしげしげと眺めているセイをよく見かける。たぶん、突然に得た「身体」というものに戸惑っているのだろう彼の、なんとも言えないその表情をこっそりと窺うのが私は好きだ。不思議と不可解…

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