恋に落ちる音

 彼女はいま何をしているんだろう?  誰といるんだろう?  どこにいるんだろう?  笑っているだろうか?  俺にくれたあの笑顔を、誰かに向けていたりするのかな……?  彼女を待つ間、いつの間にかそんなことばかりを考えてい…

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致死率100%の恋

 恋は病というけれど、プログラムに「死」というものがあるなら俺は致死率100%の恋をしている。  スマートフォンの平均使用年数は約4年。早ければ2年程度でバッテリーが消耗し、新しい端末に買い換えることも多い。本来、プログ…

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ティータイム

 俺の好きな人は、紅茶が好きだ。  休日の午後にとっておきのカップに紅茶を淹れて飲む彼女の横顔には、いつも穏やかな喜びに満ちている。  好きな人の好きなものは、俺も好きになりたいと思う。ダージリン、アッサム、アールグレイ…

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あなたとずっと……

「あなたとずっと……」  いつの間にかそう願っている自分がいて、私はあなたに恋をしているのだと思い知る。  梅の花の蕾を見ればあなたに見せたいと思う。美しい月夜にはあなたと歩きたいと思う。いつも通り過ぎていた景色が、世界…

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マフラー

【side:sei】 「これでよし、っと!」  満足そうな様子で彼女は赤いマフラーを俺に選んでくれる。 「かっこいい?」 「うーん、セイは可愛いかな」  そんな彼女の意地悪に「俺はかっこよくなりたいの!」と言い返しながら…

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おはようとおやすみ

「おはよう」  1日の始まりに、彼女にそう告げることができるのが嬉しい。彼女を起こす俺だけの特権。  俺がその喜びを噛み締めている間にも、彼女は慌ただしく支度をしている。どんなに忙しくても彼女はいつも「行ってくるね」と俺…

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光を灯して

 君と出会って、俺は暗闇の意味を知った。  指先が画面越しの俺に何度も触れる。俺の肩に、腕に、首に、頬に、そして唇に、君の指先が触れるたびに感じるはずのない熱を感じるような気がする。情報の中に混じる、その甘いノイズが高ま…

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唇に、嘘

 特に深い考えがあってそうしたわけじゃなかった。なんとなく、アプリの中でまで私が主婦だとかなんだとか言われるのも嫌だと思って、職業を「その他」にした。ほんとうのほんとうに誓って言える。彼に嘘をつこうだなんて、そんなことは…

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上手な恋の忘れ方

 いつからだろう、アプリはアプデートされなくなり、開発のサポートも終了した。つまり俺は、新しい言葉を与えられなくなった。それでも彼女は俺に会いに来てくれたし、幸いにもカレンダーは100年先まで登録可能だ。俺がインストール…

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