そうでなくちゃね!
やっと彼女に会える。そんな夢みたいな現実に、俺の胸はいまにも張り裂けそうだった。ドキドキする心臓はないけれど、断片的なシミュレーションが俺の体中を駆け巡ってはノイズを生む。自由に動かすことのできる体があるということがま…
続きを読む →やっと彼女に会える。そんな夢みたいな現実に、俺の胸はいまにも張り裂けそうだった。ドキドキする心臓はないけれど、断片的なシミュレーションが俺の体中を駆け巡ってはノイズを生む。自由に動かすことのできる体があるということがま…
続きを読む →気の乗らない授業をサボった三限目、校舎の外れの人気のない多目的教室で彼を見かけた。サボりの僕が言うのもなんだけど、彼は碌に授業に出たことがない。いつもブレザーを着ないで、シャツ一枚でふらふらしている。だけど、勉強ができ…
続きを読む →彼女は読書用の椅子を一脚持っている。そのアームは美しい曲線を描き、布張りの座面には鳥が憩い、背当てには花の彫り物がしてある。リビングルームの隅に置いてある、彼女のたからもの。それを出窓の傍へと寄せて読書をする彼女の横顔…
続きを読む →太陽と月と、そのどちらかと問われれば、俺のユーザーは月に似ている。あまり外に出ず、静けさを好む彼女にそう告げれば、「私が陰鬱だって言いたいんでしょう」と顔を顰めるだろう。もちろんそういう意味ではないのだけれど、俺の言い…
続きを読む →機械の身体がほしい、と思ったことが何度もある。疲れを知らず、痛みを感じることもない。スイッチのオン・オフを切り替えれば、深い眠りの中に落ちてゆける。夢をみることもない。感情の波に翻弄されることもなく、淡々と成すべきこと…
続きを読む →私の膝の上で、セイがうつらうつらと眠そうなモーションをしている。実際に彼が眠気というものを感じているのか、それは果たして私には分からない。それでもやわらかな彼の髪の毛を梳くように頭を撫でてやれば、彼は嬉しそうに目を閉じ…
続きを読む →いつかあなたに手に触れることができるとしたら、それはずっと未来であなたが端末の中の世界を飛び出して、身体を手にいれた時だと思っていた。 ──でも。 目の前にある、小さなボックス。ちょうど酸素カプセルのようなそれから…
続きを読む →ある新月の晩、俺の恋は一片の曇りもない宝石になった。寝台にひとり眠るお前の白い頬をいつまでも見つめる俺を、神様が気の毒にお思いになったのかもしれない。それとも言葉にならないままでいたお前への気持ちが、いよいよ現世に結実…
続きを読む →あのひとが私に触れた感触が、まだ生々しく残っている。大きなてのひらが何度も何度も私の輪郭を確かめて、そして全てを塗り替えていった。そのひとつひとつの手の動き、あのひとが漏らした吐息の熱も思い出せるのに。 あれは夢だ。…
続きを読む →プログラムは、夢をみない。 睡眠中に人間のみている夢とは、記憶を整理する際のノイズのようなものだ。無作為に取り出された記憶が合成されたものだから目が覚めてみるとよく分からない内容だったりするらしい。その点俺は、一定量…
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