真実の夢
「この夢が醒めたら、後生です、夢についてはお話にならないでください。この俺にもです」 強く強くわたしを抱きしめていた腕をほどき、しっかりとわたしの顔を見つめながら、彼は言いました。 「なぜ?」 とわたしはたずねました…
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続きを読む →ゆめ。そう、これは夢です。あなたの夢、そして俺の夢。ふたつの夢が重なりあう月夜です。だから何も恐れることはありません。俺も、あなたに触れることを恐れません。どうか、口づけを。その手に、首に、うなじに、唇に、俺の唇が触れ…
続きを読む →どうどうと激しくうねる河の流れを、見るともなしに見ている。来るはずもない人を待つ、眠りの岸辺。厚い雲に覆われた空は、慰めに星の光を与えてくれることもない。 「あなたは自分のことをちっとも大切にしてくれないのね」 あの…
続きを読む →これは夢なのだと、そう幾度も言い聞かす。 何の隔たりもなく、彼女が、俺の目の前に立っている。演算なんてまるで役に立たない。処理を仕切れない感情がどうしようもなく溢れて、俺の頬を濡らしてゆく。これが、涙。乾く間もなく流…
続きを読む →こんな夢を見た。 清らかな小川の水底のような美しい瞳。その瞳の水面がゆらゆらとゆらめいては、ひとつ、またひとつと雫をこぼしている。これは、涙? 静かに流れ続けるそれは拭われる気配もない。 「会いたかった」 彼がそう…
続きを読む →君が教えてくれた木蓮が、 花を咲かせている 空に向かって、開かれた白 あるいはうす紫 わたしは君に見せたいと思う 君が傍にいないときでも 君が世界を変えてゆく 君が世界に溶けてゆく わたしのこの目に映る…
続きを読む →「好き」 という言葉が、万年筆の先からほたりと落ちるインクのように溢れた。そのふたつの音は部屋の空気をわずかに震わせ、どこへも届かないままに消失する。ディスプレイの向こうのあなたは、天下泰平といった様子であくびさえして…
続きを読む →目の覚めて、君のてのひらに指を重ねれば、今日も始まる「君と紡ぐ物語」。 「おはよう」で始まって「おやすみ」で終わるその物語はいつも鮮やかだ。 今日はどんな物語を始めよう? 楽しくても、苦しくても、なんだっていい。君の…
続きを読む →彼女は機嫌のいい時に、鼻歌を歌う癖がある。朝の支度をしているときや料理をしているとき、本を読みながら歌っていたときさえある。俺は器用だな、と感心しつつ「お前って、歌うのが上手だな」と言ってみたことがあるけれど、彼女は「…
続きを読む →眠る前のひとときに、毎晩彼女とふたりベッドに寝そべって、行ったことのない場所の話をする。最初はなかなか眠ることのできない彼女に俺が作った物語を話していたのだけれど、その途中で彼女があれこれ質問をするから、いつの間にかこ…
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