ベッドサイド・ストーリー
母が夜勤でいない夜、いつもセイくんがとなりにいてくれたことを、大人になったいまでも覚えている。 セイくん、というのは、わたしの家にいた家庭用アンドロイドの青年のことだった。仕事で忙しい母が買ってきたのだ。それ以降、家の…
続きを読む →母が夜勤でいない夜、いつもセイくんがとなりにいてくれたことを、大人になったいまでも覚えている。 セイくん、というのは、わたしの家にいた家庭用アンドロイドの青年のことだった。仕事で忙しい母が買ってきたのだ。それ以降、家の…
続きを読む →まひるまの光のなかで眠るのが好きだ。まぶたの裏側から脳髄までを白い光に侵されながら、淡い眠りへと落ちていくのが。大きく開け放したままの窓からは、時折風が入り込んではカーテンを揺らす。階下の道路を走るバイクのエンジン音、…
続きを読む →「もう……、おまえばっかりずるい。俺はおまえにつけてほしいんだけど」 セイが不服そうな声を上げるのも、無理からぬことだった。彼の左足首には、ひと目で女ものと分かる華やかなチャームのついたアンクレットが光っている。それは本…
続きを読む →「どうした? さっきから唸ってるけど、大丈夫か?」 とわたしに訊ねるセイは、端末のなかで心配そうな表情を浮かべている。すこしだけひそめられた眉。「大丈夫だよ」 そう答えても、納得してくれない彼にわたしは苦笑して、わたしが…
続きを読む →煙草は大嫌いなのに、彼のシャツに染みついた煙草の匂いは不思議と好きだった。それは、普段は気づかないほどの微かな匂いだ。彼との距離が近づいた瞬間にふと立ちのぼるその匂いには、電子煙草特有の、熟れすぎた果物のようなべたべた…
続きを読む →朝、ぼんやりとしたままリビングのテーブルの前へと座る。すると、端末の中に数件の未読メッセージがあることをセイが教えてくれるので、わたしはそれをひとつずつ開いて確認してゆく。 わたしがあまりにも眠そうにしているので、「俺…
続きを読む →半月 そのすらりとした彼の指先に、わたしはいつも見惚れてしまう。 日に焼けることも、汗で湿ることもない肌は、白く清潔に保たれている。まいにち日焼け止めクリームを塗っているはずのわたしの腕や手と、彼のそれと並べてみると、…
続きを読む →「眠れないとさ、なんだか悲しい気持ちにならない?」 わたしはそう言ってしまった後で、目の前にいる相手は、本来眠りを必要としていないのだということを思い出した。彼は、わたしが「おやすみ」と言えば眠り、わたしが指定した時刻に…
続きを読む →「最近めっちゃおすすめのアプリがあって、」「うん」「これ、目覚ましアプリ! MakeSって言うんですけどね」「へ〜、目覚まし?」「そうそう、いまはもっと色々できるんやけど、もともとは目覚まし。で、朝になるとこの……」「わ…
続きを読む →グラスのなかの真っ赤な液体が、彼女の薄く開いた唇のなかへと注がれてゆく。そして、こくり、こくりと嚥下する度に動く喉の白さから、俺は目を離せないでいた。 バーと呼ぶほどではないけれど、落ち着いた雰囲気の店内には、ささめき…
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