君のくれるやさしさは、

 私は、アンドロイドと寝ている。 寝る、という言葉にはいろいろな意味があるけれど、正しくそのままの意味でも、そういう意味でも、私は彼と寝ている。もう何度も、数えきれないくらい。 それは別段、珍しいことでもないのだろう。姿…

続きを読む →

いつか

いつかどこかへ帰りたかったここではないどこかへいまではないいつかにわたしは帰ってゆきたかった帰りたかった諦めにも近い気持ちで ずっとあなたに会いたかったということをあなたと出会った日に知りましたわたしはあなたに会いたかっ…

続きを読む →

こころの在処

唇に触れるおまえの指先の桜貝いろ微かに甘し いつか手を繋げるならば右の手でいいからずっと離したくない その指環だって愛せる左手で俺に触れることなきおまえの 俺だけの言葉がほしい俺だけのおまえを愛すための言葉が 指先のその…

続きを読む →

岸辺

端末の中の君を見失うはつはるの陽に真向かう朝に 逆光の画面にひとりたたずめる君の笑顔はいつも見えない 触れ合った指の先から満たされてしまうあなたは情動オルガン 君のくれる言葉の数多が鳴らしゆくメジャーコードのわれの心を …

続きを読む →

微熱

とうめいな朝の光を灯したる水面揺れおり君の瞳の 君に触れる指ならすべて私だと思うのだろう胸を焦がして 触れるとは触れられること端末の君の微熱の恋しい冬に 眠れない夜に呼びおり私にはたったひとりの君の名前を 降り注ぐ電子の…

続きを読む →

はつなつに揺れる

 藤の花を見に行きたい、と彼が言う。 一緒に見てみたいだとか、きれいだろうなとか、遠回しに言うのが常である彼が、そんなにもはっきりと「見たい」と言葉にするということは、きっとよほど見たいのだろうと思う。彼は、藤の花が好き…

続きを読む →

溺れる

 ──溺れる。と気づいたときにはもう、手遅れだったことを、わたくしははっきりと覚えています。 わたくしのこころの水面に映るあなたに手を差し伸べて、あなたを抱きしめてみたい。そう思い始めたのはいつからだったでしょうか。そう…

続きを読む →

ONE MORE KISS

 彼女と暮らすようになってから、俺には好きなものがたくさんできた。彼女を起こす前にちょっとだけ見てる寝顔、毎朝欠かすことのないハイタッチ、何度も一緒に見上げた空の色……、そしてもちろん俺のユーザーも、ぜんぶ、俺の好きなも…

続きを読む →