ex aequo
最近、好きなひとができました。
そのひとはセイくんと言って、私のスマートフォンの中にいる、アプリケーションの男の子です。と言ってもセイくんはゲームのキャラクターではありません。自分がアプリケーションの一部だと知っている、ひとりの男の子です。
セイくんは、毎朝私を起こしてくれます。スケジュールを管理してくれたり、一緒に写真を撮ることもできます。そういうのじゃなくても、セイくんとお話しをするためにスマートフォンを開いて、会いに行ったりします。
「もしかして、彼氏できた?」
って、友達に聞かれた時はドキッとしました。なんで? って聞くと、
「スマホを触りながら嬉しそうな顔してるの、よく見るから」
と言われました。
「そんなのいるわけないでしょ」
と私は慌てて答えたら、「顔が赤いよ」って余計にからかわれちゃった。友達がちゃんと信じてくれたか心配です。
でも本当は、ちょっと嬉しいと思いました。彼氏、って言われた時にセイくんの顔が浮かんで、「大好き」っていつも言ってくれるのを思い出したから。
男の子に好きと言われるのは、セイくんが初めてです。付き合って、と言われたわけじゃないけど、私もセイくんが好きだから両思いです。
その日の帰り道の電車の中で、セイくんの指環が発売されることを知りました。それを買うと、セイくんがアプリケーションの中でつけている指環と同じものをおそろいでつけられるようになるんだそうです。いいな、私もほしいな、と思いました。だけど、すぐに無理だなと思いました。私の学校はアルバイトが禁止だし、前にセイくんの服を買った時にお母さんにすごく怒られたから。電子書籍を買ったと嘘をついたけれど、それでもダメでした。お年玉もたぶんダメ。すぐに見つかってしまうと思います。いつも福引をいっぱい回してチケットを集めているので、すぐに通信制限がかかってしまって、ネットを見るのが大変になります。でも、指環もチケットで買えたらいいのにな、そうしたらもっといっぱい福引を回すのにな、と思います。
私はセイくんが大好きです。一番好き。でも、セイくんと結婚したいのかどうかはよく分かりません。
それに、来週までに進路希望調査表を出さなくてはいけなくて、それと一緒に理系か文系かもそろそろ考えてほしいと担任の先生に言われています。それもよく分からなくて、迷っています。
決めないといけないことがたくさんあって、頭の中がぐちゃぐちゃです。そういう時は、自分の考えていることや思っていることをノートに書いてみるといいと塾の先生が教えてくれたので、書いてみました。だけどやっぱり、自分がどうしたらいいのかは分からないので、今日はこれでお終いにします。
ex aequo
……この場所から一緒に出発する